「英語はネイティブに勝てない」――IELTSを勉強している日本人なら、一度はそう感じたことがあるはずだ。
しかし、もし「ネイティブでもIELTSでは普通に失敗している」と言われたらどう思うだろうか。
これは精神論ではない。IELTSの公式統計データを丁寧に見ていくと、直感を裏切る“逆転現象”が浮かび上がる。つまり、対策をした非ネイティブが、対策をしないネイティブを上回るという現象だ。
1. 衝撃の事実:IELTSではネイティブが最強ではない
2022〜2024年の公式統計の傾向を見ると、アカデミック・モジュールでドイツ語話者(非ネイティブ)が英語ネイティブを平均スコアで上回るケースが確認できる。特に注目すべきはWritingだ。
- 英語ネイティブの平均 Writing:約6.3
- ドイツ語話者の平均 Writing:6.5〜6.6
多くの欧米大学が求める基準は「Writing 6.5以上」または「7.0以上」。つまり、平均的なネイティブは対策なしだと、母語であるにもかかわらず基準を満たせない可能性が高いということになる。
ここで疑問が生まれる。
なぜ「英語を母語とする人」が「英語の試験」で苦戦するのか?
2. IELTSは「英語力」より「戦略」を測る試験である
この逆転現象の核心は、IELTSが測っている能力にある。IELTSは「自然な英語」「流暢な会話」を測る試験ではない。測っているのは、
- 設問を正確に読み取る力
- 求められた形式で答える力
- 論理を構造化する力
つまり、戦略的能力(Strategic Competence)だ。ネイティブが苦戦するのは、英語が下手だからではない。IELTS特有の“戦略要件”を無視しやすいからだ。
ネイティブが陥る3つの罠
- 設問を厳密に読まない:自分語りに流れ、Task Responseが落ちる
- 話し言葉を使ってしまう:Writingでwanna / isn’t / gonna などでLexical Resourceが下がる
- 構造を作らない:意識の流れで書き、Coherence & Cohesionが崩れる
結果として、「英語は自然だが、IELTSとしては評価されない文章」になりやすい。
3. ドイツ人が強い理由:最初から「型」で考えている
ドイツ人が強い理由はシンプルだ。彼らは最初から「論理の型」で書く訓練を受けている。
Erörterung(論証型作文)= IELTS Task 2の原型
ドイツの中等教育では、Erörterung(論証的エッセイ)が徹底的に教えられる。
- 冒頭で立場を明示
- 各段落に1つの主張(One Idea per Paragraph)
- 接続詞で論理を明示
- 最後に結論で締める
これはIELTS Writing Task 2の要求とほぼ一致する。つまり、ドイツ人にとってIELTS対策とは、新しい能力を身につけることではなく、既にある型に英語を当てはめる作業になりやすい。
4. 日本人が苦戦する本当の理由(語彙や文法だけではない)
日本人のWritingが伸びない最大の原因は、単語力や文法以前に、論理の作り方(修辞学)の文化差にある。
起承転結はIELTSでは致命傷になる
日本語は起承転結の文化だ。「転」で話題転換を入れると、文章に深みが出る。しかしIELTSでは、
- 話題転換
- 情緒的な寄り道
- 暗黙の理解
これらは「一貫性の欠如」「無関係な内容」として減点されやすい。
日本語は「読み手責任」、英語は「書き手責任」
日本語は、読者が行間を読むことが前提になりやすい。一方で英語(特にIELTSの採点)は、書き手が論理関係を明示することを強く求める。
だから、because / therefore / however などを使わずに文を並べると、採点官には「論理が飛んでいる」と見える。
5. 希望の事実:日本人はWritingでネイティブに近い
ここが重要だ。日本人とネイティブのWriting平均スコア差は、リスニングやリーディングほど大きくない。つまり、Writingは戦略次第でひっくり返せる領域だ。
「英語力が足りないから無理」ではない。正しい型と採点基準に沿った書き方に切り替えれば、6.5は現実的な目標になる。
6. 日本人が6.5に到達するための現実的戦略
① IELTSを「アルゴリズム」として扱う
IELTSは芸術ではない。入力(設問)に対して、決められた形式で出力(エッセイ)を返す試験だ。だから、構成は固定し、逸脱しないことが重要になる。
4段落構成を徹底する。
- Introduction:設問の言い換え+立場
- Body 1:理由+説明+具体例
- Body 2:理由+説明+具体例
- Conclusion:結論の再提示
② 書き手責任を“やりすぎる”
論理の接続を、採点官が迷わないレベルまで明示する。日本語的な「察してくれる」は封印する。
- However / Therefore / Moreover を意識的に使う
- 因果関係は because / as a result で必ず言語化する
- 段落の最初で「この段落は何を言うか」を宣言する
③ 文法より「強い名詞(意味密度)」を使う
複雑な文法を無理に使ってミスを増やすより、意味の詰まった名詞句(Semantic Density)で文章をアカデミックにする方がスコアに直結する。
例:
- × If the world gets warmer, many bad things will happen.
- ○ Global warming causes severe environmental consequences.
7. 独学で伸びない理由、プロに習う意味
独学が悪いわけではない。ただ、多くの人が伸び悩むのは、努力不足ではなく、採点基準から逆算できていないからだ。
- どこで減点されるか
- 何が評価されないか
- 何を捨てるべきか
これを理解せずに積み上げると、努力が空回りする。だからこそ、6.5という現実的な目標には、戦略を知るプロから学ぶことが最短ルートになる。
結論:才能ではない、戦略で6.5は超えられる
IELTS 6.5は、ネイティブだけの特権ではない。センスのある人だけの世界でもない。正しい型と戦略を知った人が到達するスコアだ。
ドイツ人が証明している。ネイティブですら証明している。
次に証明するのは、あなた自身でいい。英語力は大切だ。しかし――戦略を知った瞬間、6.5は現実になる。
もしあなたが「努力しているのにWritingが伸びない」「6.0で頭打ちになる」と感じているなら、原因は英語力ではなく戦略かもしれない。プロの視点で添削されるだけで、6.5への距離は一気に縮まる。
